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第二回 MAVICのCOSMIC SLRという秀逸なホイールを再考します

2023.Jan. 28

引き続き、第二回です。MAVICのCOSMIC SLRという秀逸なホイールを再考します。

前回、思いつくままに語ってしまいましたが、主に伝えたかったのは「リムが軽量である」ということ。

基本的にホイールの重量というのはホイールが完成している状態で計りにかけた重量です。ホイールは軽い方がいいなんて言いますが、どこがどう軽いかで同じ重量のホイールであっても走りの性質は全く異なってしまいます。

外周部にあたるリムの重量の違いは、相対的に回転の中心に近いハブやスポークの重量の違いよりも走りに与える影響が大きいです。なので「FOREカーボンテクノロジー」などの技術を用いてリムを軽量にしたMAVICのホイールは【#走りが軽いマヴィック!】となるわけです。

ここで疑問がひとつ。リムが軽いのにホイールセットとしてはなんで重くなっちゃったの?という問題です。

COSMIC SLR 32や45、軽い!とは正直言いにくい重量です。カタログスペックでCOSMIC SLR 32が前後で1390g、COSMIC SLR 45が1440g。

例としてCOSMIC SLR 32とライバルとなる、他メーカーで評価の高い比較されがちな山岳用ホイールSHIMANO DURA-ACEのC36がセットで1350g、ROVAL ALPINIST CLX Ⅱはもっと圧倒的で1265g、などなど、オブラート無しではっきり言うならば「スペック表を見た時に購買意欲をそそるホイール」はたっくさんあります。

ではなぜこのような重量になってしまったか?それはMAVICがCOSMIC SLRで目指したものが「スペック表を見た時に購買意欲をそそるホイール」ではなく「良く走るロングライフなホイール」だからではないか?と考えています。

重さの一端は薄い楕円形状をしたエアロスポーク「Elliptical spoke」。

有無も言わさず超定番SAPIM CX-RAY、あるいはもっと細く軽量なスポークにしておけば簡単に軽いホイールになったはずが、わざわざ特注してまでこのスポークを使う理由。一つはエアロ。これは前回もお話しさせていただきました。もう一点は「剛性」です。

CX-RAYよりも幅も厚みもあるので同テンションならスポークの変形量は少なくなるはず。さらにFOREカーボンスポーク&ニップルなら従来のスポーク&ニップルよりも2倍の強度。より剛性の高いホイールに仕上げることが可能です。ただ、質量が増えるので当然重量増。スポークによる剛性増と重量増を天秤にかけた結果、FOREカーボンテクノロジーが採用された、と考えるべきでしょう。

ちなみにSLR32とSLR45、リムハイトが違うのでスポーク長も違います。一般的にスポークは短い方が剛性が高くなります。BMXのホイールをイメージしていただくとわかりやすいですね。SLR32も十二分に高剛性で反応が速いですが、ハイトがありスポークの短いSLR45の方がさらに反応が良く、スパルタンな上げ下げが多いハイスピードなロードレースに対応します。

 

さて、ハブです。SLR32・SLR45、どちらも同じハブが使われています。

皮肉を込めて「DTスターラチェット風」と呼ばれるID360ラチェットシステムについて言及される程度にしか知られていないMAVICのハブ。実は結構すごいんです。剛性を高め良いホイールとするための仕掛けが多く使われています。

例えばリアハブには外径17mm、厚み2.5mmの強靭なアクスルが使われています。これは一般的に使われているよりも1mm厚く、細いアクスルと比較し曲がりに対する剛性が向上。ベアリングへのダメージが減り長寿命になるという主張があるようです。

さらにベアリングについて言うと比較的ポピュラーなものですが、他社製比で大型のベアリングを採用することで回転性能だけでなく寿命・耐久性についても考え抜かれています。比較的ポピュラーなものなので純正以外でも手配が容易、というのも良い所。NTN、Ceramicspeed、なんでも選び放題です。逆に軽さを狙って過度に小さなベアリングが入ったホイールですと、スルーアクスルの締めすぎなどで簡単にベアリングが痛みます。

ここでもう一点。ハブの横方向のガタを取るためにウェーブワッシャーで与圧をかける方式を採用しています。どんなメカニックが作業しても与圧は一定で適切、ベアリングを傷めることなく回転効率はベスト、というものです。素晴らしい。

せっかくID360ラチェットシステムに触れたので一言。気を付けていただきたい点もあります。防塵性が高いがゆえに、水分が入ってしまうと出てくれません。そのままにしておくと内部でラチェットが錆びてしまいます。工具無しで出来るので定期的なグリスアップが推奨されていますし、MAVICに詳しい方によると時折開けて見てみるのが良いみたいです。ID360用のグリスは常時在庫するようにしております。

と、「重くなってしまうけど走りが良くなるから採用」という機構が多く存在するのでホイール重量だけで言うと「まあまあ軽い」程度になっています。

ですが、良く走る。これが大事な所です。

ホイールを構成する要素について掘り下げてみると、MAVICがいかに緻密に作られているか、理解が深まるんじゃないかなと思います。

実際にCOSMIC SLR 32も45も乗ってみると良く走るなぁ、という印象を持つはずです。私も特にCOSMIC SLR 32は、もっと軽いホイールよりも走るし登るし、登りの途中で踏みなおした時なんて加速感に感動しました。

 

さて、だんだんMAVICが好きになってきたのではないでしょうか。続きます。

第一回 MAVICのCOSMIC SLRという秀逸なホイールを再考します

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