MTB


サスペンションセッティング 2018 ~ エアボリューム編 ~

2018.Jul. 7

 

前回はDH系コンプレッションについてお話しいたしました。
今回は遂に最後の記事、エアースプリングのボリューム調整をお送りしたいと思います。
コンプレッションのセッティングを行っても、ボトムする、踏ん張りが足りないとなった際のセッティングです!

 

 

まずは、何故エアボリュームの調整で踏ん張り感が出せるかと言うお話しから。
エアースプリングを採用しているフォーク、リアユニット。
永遠の課題がスプリングカーブをどれだけコイルスプリングに近づけられるかという事なんですが
今迄のエアースプリングではどうしても容量が足りず、初期の張る感じが払拭出来ずにいました。
初期の張り感が強いんだけど動き出すと踏ん張り感が薄く、スコスコとストロークしてしまう・・・。

そこで各メーカー、ネガティブ側を工夫して初期の張り感を無くすべく奮闘していました。
近年のフォークではネガティブ側を簡素化しポジティブ側の容量を増やし、
ネガティブを自動調整とする事で限りなくコイルスプリングに近いフィーリングを得る事に成功しました。
また、ポジティブ側のエアー室の容量が増えた事で、今まで出来なかった
“スペーサー”を追加してのスプリングカーブの変更が可能になりました。
空気は容量が大きければ圧縮しやすく、容量が小さければ圧縮し辛くなります。

この特性を利用し、スペーサーの増減でスプリングカーブの変更が可能となりました。
容量が小さくなれば圧縮し辛いポイントがどんどん手前に来る事から
スペーサーを追加してエア室を小さくする事で後半にかけて圧縮し難くなり、
支える空気圧が同じなら後半の踏ん張りが強くなり、
ボトムし難くしっかりと踏ん張り感のあるスプリングカーブに設定できるという事なんです。
※厳密にはスペーサーを追加するとエア室の容量が変わりますのでフィーリングは僅かながら変わります。

次にいよいよセッティング方法のご案内となりますが、その前に一つ注意点を、
あくまでエアースプリングの容量調整は“補助的”なセッティングである事をお忘れなく。
コンプレッションをしっかりとセッティングしても問題が解決出来ない場合等のセッティングとなります。
※サグが確実に設定されている前提です。
やみくもにエア室の容量を少なくしてしまうと圧縮した際、
エアー圧が上がり過ぎてしまい最悪は耐久性の低下等も考えられます。
また、スプリングの踏ん張り感に頼り過ぎてしまうと、
ダンパーセッティング(コンプ側)が疎かになってしまい、セッティングの本質から大きく外れてしまいます。
結果、ボトムはしなくても全体的に動きが硬くなってしまい、せっかくのサスペンションが機能を発揮出来なくなってしまいます。

 

それではセッティング方法のご案内へ。
まずはフロントフォーク、代表的なFOX、ROCKSHOXでお話しして行きたいと思います。

簡単な分解作業でエア室にスペーサーを追加し、物理的にエア室の容量をコントロールします。

共にエア側トップキャップの裏側にスペーサーを積んで行く形となります。
~2017のFOX 36FLOATはトップキャップのシャフトにスペーサーを通す形となります。
単純にスペーサーを追加するだけとなりますので作業自体は、必要なツールがあれば簡単に出来てしまいます。

 

一点だけご注意頂きたいのは “作業前に必ずエアーを抜く” 事をお忘れなく!!

高圧の空気が入っていますので、抜かずにトップキャップを外してしまうと勢い良くトップキャップが飛んだり
内部に入っているオイル等が噴き出す恐れがあり重篤なケガの原因となります。

トップキャップを外したら、後はスペーサーを追加するだけ!
あくまで補助セッティングとなりますので大きく変えてしまうより、
1つずつ追加し実走を繰り返して行く事をお勧めします。

そして、忘れがちですがエア室の容量を調整しますので、
スペーサーを追加したら “サグ” の調整をお忘れ無く!!
少なからずサグの量も変化しますので、確実なセッティングの為には必要不可欠な作業となります。

また、スペーサーには決まった容量の物しかありませんが、
1個追加では効果が大きすぎる・・・、と言った場合には裏ワザになってしまいますが

スペーサーをカットしてサイズを変えて容量を調整する事も出来ます!!
少し詳しい方ならサスフルードを使用し油面調整的な調整でも良いんじゃない??と思われるかもしれませんが
フォークによってはネガティブ側へ空気のやり取りをしている通路を、
フルードが塞いでしまう事もありますのでフルードの追加による調整は厳禁です!!
※古い設計のフォーク等には有効な手段ですが、ストロークした際に
最大許容エアー圧を超えてしまう可能性もありますので過度の追加はこちらも厳禁です。

 

次にリアユニット。
こちらも形は違えどスペーサーを追加する事で容量の調整を行います。


FOXでは、~FLOAT Xまでの機種はチューニングキットをエア室に追加。
FLOAT X2ではボリュームスペーサーをアウタースリーブ内へ追加します。


ROCKSHOXではDebonair仕様の物、~2011のVIVID AIRが対象でBOTTOMLESSRINGを
アウタースリーブ内へ追加します。
リアユニットも作業前に“必ずエアーを抜いて下さい”。
FOXはフレームにもよりますがユニットを取り付けたままスペーサーの取付が可能です。
※FLOAT X2の旧スペーサーはフレームからユニットを外します。
ROCKSHOXはフレームからユニットを取り外してスペーサーの追加を行います。
リアユニットへのスペーサーの追加はフォークに比べて難しい物が多いので
日頃お世話になっているショップで作業をお願いした方が良いかも知れません。
こちらもフォーク同様、少しずつ追加し実走を行う事をお勧めします。サグの再設定もお忘れなく!!

 

18-19モデルのFOXに関しては代理店のマムアンドポップスさんのブログで注意点が掲載されています。

http://mamapapa.at.webry.info/201806/article_15.html

ボリューム調整の際にご参考下さい。

 

※フォーク、ユニットどちらにも言える事ですがメーカーが推奨するスペーサー量は
絶対に超えないで下さい、破損の原因となります。
スペーサー量が多くなりすぎる場合はダンパーセッティングを一度見直しましょう。
コンプレッションが弱すぎたり、リバウンドが強すぎる事が考えられます。
後は何度もお話ししていますが“サグ”の設定も今一度確認してみて下さい!

と言う事で、エアー室の容量調整、ざっくりとお送りいたしました。
調整のご案内と言うよりは、ボリューム調整の役割的な内容になってしまいました・・・。
これで連載していたサスペンションセッティングは一先ずこれにて終了となります。
少しは皆さんの疑問解決のお役に立てたでしょうか??
もう少し具体的なお話が出来れば良かったのですが、
こればっかりは実践しながらでないと分り難いので・・・。

 

次はどの様な内容を書きましょうかね~??
何か面白い企画を思いついたら、またここでお伝えして行きたいと思います。