MTB


【スタッフの海外ライド記】2017EWS R8 Italy – その6 レース2日目

2017.Nov. 10

【レース2日目】

最終ステージ7 大勢のギャラリーの中を走り抜けるDH MENに向けてひた走るDay2 50.2km

獲得標高は1300m程度で、ステージ4~6は比較的イージートレイルだけに、

ミスが順位に直結するレースになりそうです。

Finale-EWS_Course-Map-Day-2-2017

2日目のスタートは30分遅い朝7:30分~

前日と同じように朝早くに起床し、ガサゴソと支度を始めます。

今日は割と早く着いて、ライダーたちの姿もまばら。

受付スタッフも現れて、今日のチェックを受けてスタートに並びます。

EWSD2_REGI

 

20秒置き、3人ずつのスタートですが、スタートしてしまえば何人か固まってステージ4を目指します。

ここは2回も走っているので距離感も分かり、気持ちも余裕です。

EWSD2_L4

 

1時間ほどでステージ4の入り口へ

僕の参戦しているクラスはマスターズ(40オーバー)クラスです。

写真を見ての通りの年齢層高めの男たちばかりですが、

みんな只者じゃないです。

それはもうこのレースに参加しようという各国のツワモノばかりが揃っている訳ですから、

登りもガンガン登りますし下りもガンガン攻めます。

色々と聞いたり元プロDHレーサーだったり、というのはザラ。

さすが世界から集まるワールドシリーズというのを思い知ります。

しかし、口数は少なくともみんな気さくな男たちばかりなので、同じ戦いに挑む同志でもあります。

レースなのでお互いの順位を競っているわけですが、

それ以上にそれぞれが完走するという意志のもとお互いに助け合うという気持ちの結束すら感じて走っていたように感じます。

EWSD2_SS4

 

ステージ4 Dolmenは比較的イージーなトレイルでしたが、それでもドロップオフやスティープでタイトなコーナーも次々と現れてきます。

それこそプロライダーとは雲泥のタイム差が出てしまうので、やはりそこには歴然としたテクニックの差があるんだと痛感します。

トレイルを下ってすぐに次のステージに向かいます。

10%程度の農道の登り坂をひたすら登りのどかな畑を横目に、

EWSD2_L5

 

うしろを振り向けば、これぞフィナーレ!といった山々が見えます。

EWSD2_L5_2

 

そんなこんなでステージ5Val Nava入り口に到着

峠の集落から少し入った教会の墓地の裏、といのがミソですね。

EWSD2_SS5

 

写真こそないですが、このステージでは大ハプニングが。

 

このステージもイージーなトレイルなので、

最初から飛ばして行こう!と、スタートから意気込みます。

5秒前になりスタンディングで3、2、1、スタート!

 

渾身のゼロスタートダッシュでモリ漕ぎで踏み足していったその時、

スタートして数メートルのところでチェーンが切れました。。。。

数メートル先で次の出走順番を待つ後続ライダーたちの『Ohhh……』という声が今でも思い起こされます。笑

 

【写真はイメージ】

broken-chain-1wtmk1

 

実は人生で初めて(MTBで)ペダルを踏み切ってチェーンを切りました。

チェーンなんて絶対に切れないだろうと思っていたので『ほんとに?』となりましたが、、、

我に返り、やっちゃったんだ!と思いましたが、

ここのコースは下り基調。なんとか登り返しもがんばれば意外と走れる!

そのまま走って飛び乗って再スタート、、、

しかし、少し走ったところで思いとどまります。

 

ご存知の通り、

エンデューロ・レースは1日に数ステージを渡り歩き、

下りを基調とした競技区間SS(スペシャルステージ)のタイムを競うレース。

SSが終われば次のステージに向かうために、移動区間(リエゾン)があり、

そこを走って次のステージへ向かわなければなりません。

もちろんチームメイトや友人に手伝って搬送してもらうことはできませんし、

パーツ交換もレース中に行わなければいけません。

 

さいわい、今日のこのステージ5とステージ6の間では、

タイムコントロールと言って、

時間調整をするためにスタートの広場にあるチェックポイントに一旦戻ります。

わずかな時間ですがピットに戻って破損したパーツなどを交換できます。

 

一瞬の間にその事が頭をよぎり、振り返ってスタート近くまでチェーンを取りに戻って、

掴んだチェーンをポケットにねじ込み、それから走って自転車に飛び乗りゴールを目指しました。

まさかチェーンレスで走るとは思わなかったですが、

なるべくスムーズなラインを選び下り続けました。

 

途中の林道に出るまでに大きな登り返しがあるのですが、

そこはバイクを飛び降りて押し上げ、

ギャラリーにGO!GO!と言われる中をすぐさま飛び乗って次のセクションへ。

 

狭くて急なつづら折れのセクションに入り、低速ドロップヘアピン低速ドロップの連続。

ふもとのゴールに近づくにつれギャラリーも集まり、

なんとかフィニッシュすることができてホッとしました。

 

チェーン切れの間に抜いて行ったライダーが『アンラッキーだな』と声をかけてくれます。

おそらく色々な原因はあったと思いますが、

このトラブルがタイムコントロールを受けるこのステージ5だったことは非常にラッキーでした。

 

すぐさま路肩脇に車体を置いてチェーンを直そうとしますが、どうにも短い。

どうやらミッシングリンクが吹っ飛んだだけではなく、

途中から千切れてしまって短くなってしまったのをようやく気付きました。

困ったとなあ、と思いつつも仕方ないので、

シングルスピードにしてチェーンを繋げてリエゾンを下ります。

 

最初は勢いよく下る坂も、海岸に近づけばだんだんとスピードダウン。。。。

シングルスピードにしたものの4速あたりだったので漕ぎ足すにもなかなか。。。

 

そんなとき、僕の背中をスッと後ろから押してくれる救いの手が。

 

最初は何事かと本気で思いましたが、

僕が200回転くらい(大げさに言って)でペダルを漕いでるのを後ろで見たのか、

後ろから追いついてきたライダーが僕の背中を押してくれたのです!

 

ふと振り返るとヘルメットには赤い牛の絵が、ヘルメットはシルバーとブルーに輝いていました。

有名ライダーが被っているのをウェブで見たことはありましたが、なぜこの人が!?

と何のことかさっぱり分からなかったのですが、絶対すごい人だ、ということしか感じ取れなかったです。

 

緩い坂を下って海岸通りに出てからも、広場までの道のりを延々と押してくれる

すごい申し訳ない気持ちと、押してもらってることに感謝してそれを無駄にしないように

僕もときどき200回転くらい(わりと大げさに)で漕ぎ足します。

 

『これからどうするんだ?ピットサービスに行くのか?』

『えぇ、ピットに寄ってチェーンを買ってくる。』

『SRAMブースに行くのか?なら俺が話しできるからちょっと待ってて』

と言ってSRAMブースのメカニックに話しかけてくれました。

 

そこでなんと、すぐにチェーン交換をしてくれるというじゃないですか!

メカニックは淡々と僕のバイクをスタンドに掛け、手際よく作業をしてくれました。

 

【SRAMテックブースでチェーン交換してもらっているスタッフのバイク】

EWSD2_SRAMTECHBOOTH

 

おかげで、わずかなタイムコントロールの時間の間にピットに戻ることもでき、

またレースに戻ることができたのです。

 

『作業いくら?』

『心配ないよ、無料だ。レース楽しんでくれ。』と。

 

思わずサンキュー以外になんと言っていいかも分からないくらい感激してしまい、

この大きなメカニックの男をハグしました。

本当にありがとう

 

そして、赤い牛のヘルメットの男まぎれもなくRed Bullライダーですが、

後で表彰台でわかったことですが、

このイタリアで優勝したRene Wildhaber(レネ・ヴィルトハーバー)

HPFBInstagramRedBull.comGoogle検索】でした!

見ても誰かも分からなかった自分が恥ずかしいくらいです汗

彼のおかげで完走できたと言ってもいいほど、彼にはとても感謝しています。

 

【Rene Wildhaber フェイスブックから】

ReneWildhaber

 

多くの方に助けられて再度スタートを切ることができ、

ステージ6 Briga Rightへ – 【YouTube動画】

ひたすらに漕ぎ続けるイメージのこのステージは難易度は高くないXCコースですが、

常にガレガレで、時々現れる登り返しにやられ辛かったです。

 

ここでも登り返しでギアが落ちてしまい、タイムロス。

転倒はしていないけど、激しいコース中の岩などにディレイラーをヒットしていたのか、

ディレイラーハンガーが曲がっていたようです。

 

そしてゴール近くでは、

コース内にギャラリーの男性と飼い犬が見物場所に行くためにトレイルを逆に上ってきていて、

当たるかも!というところでうまくかわせてゴール。

 

次のSSまでのタイムリミットは、1h38min

スタート地点まで何キロかはまったく把握していないので、

とにかくコンスタントに走って目指せば間に合う、と踏んで走ります。

 

先に行くことばかり考えてしまっていて、

チェーンが落ちた原因を直さずに後で直せばなんとかなるだろう、と走っていたので

途中のオフロードの登りでまたチェーン落ちしてしまいました。

 

狭い路肩でチェーンを元に戻そうとしていると、

そこでまたサッと救いの手を差し出してくれる人の手が。

 

自らの手を汚してまで手伝ってくれたその人は、Mike Broderic【HPFBGoogle検索】!

※今記事を書いていて知ったのですが、彼は2016EWSマスターズのシリーズチャンピオンです!)

MikeMaryKENDA

 

その時は誰だか分からなかったですが、

スポンサーの名前が入ったジャージを見れば、なんとなくすぐさますごい人なんだろうな、

という空気は読み取れました。

ありがとう!

 

後で分かった原因はディレイラーハンガーが曲がっていたのですが、

冷静にチェックする間もなく、インデックス調整をして

再び走り始められるまで手伝ってくれました。

 

フードステーションでエネルギーを補給し、

まだまだ先のステージ7に向かいます。

 

ステージ7Dolmenに向かう前には急な坂を押して登ります。

そうすると先には半島が見え青い地中海が目に飛び込んできます。

トラブルはあったものの、このSSも10分くらい前に着きました。

 

レースがスタートして急な斜面に差し掛かり、

いくつかのドロップをこなした後の急コーナーで、そのまま谷にコースアウトしてしまいました。

谷から目を離せず、コーナーの先を見ることができませんでした。

谷側のブッシュから抜け出すのに少し手間取り、

起き上がって僕のバイクを支えていてくれたギャラリーにサンキューと言ってゴールを目指します。

 

まだプロライダーが走り始めるにはまだまだ早いマスターズクラスのこの時間帯でも、

コースの両脇には大勢のギャラリーがライダー達の走りを見にやってきていました。

大勢のギャラリーに見守られながら走るレースはやっぱり気持ちがいいもの!

こんな機会を得られて走ることができていることを噛み締めながら、

ついに今日の最終ステージ、そしてEWS今シーズン最後のコースのゴールを切りました。

 

ゴール後は広場のチェックポイントまで戻ります。

チェックを受け、ステージに上がり最後のインタビューを受けます。

 

イタリアに着いた夜にホテルで偶然に会ったオーガナイザー(たしかそう呼ばれていた)に、

目を丸くされながら『You survived. 』と言われ、さりげなく『Yeah』と答えました。笑

彼は、今回唯一日本人として参加した僕のことを暖かく迎えてくれ、

会場の人たちにも紹介してもらいました。

 

—『これからも日本人が参加してくれるといいな。』

『そうですね。素晴らしいロケーションと人々に囲まれたこの地を紹介して、

日本人に来てもらえるといいです。』

—『いつ日本に帰るの?明日はなにを?』

『火曜日に日本に帰ります。明日はバイクツアーに行って楽しんできます!』

 

そう言って会場を後にしました。

 

Day1 走行距離54km 1740mアップ、Day2 走行距離50.2km 1300m

の2日間のレースがすべて終わりました。

フルフェイスでフル自走というのは初めての経験でしたが、

憧れだったイタリアのフィナーレ・リーグレで、2日間思いっきり真剣に走りきれたこと、

そして、まだまだマウンテンバイカーとしてテクニックも未熟なことを痛感できたことが収穫でした。

 

また、なによりもイタリア、フランス、スイスを中心とした世界各国のライダー達と一緒に走れ、

『俺とお前とどっちが速かった?』みたいなのを競う遊びを、

同じマウンテンバイカー同志で真剣に走って楽しめたことが、僕の人生でも大いなる経験でした。

 

もちろん速く走ることが全てではないですし、MTBの楽しみはレースだけではないです。

ただ、”真剣に走る”ことだけを考えて過ごせた1週間は何事にも代え難い経験となりました。。

 

僕がなぜEnduro World Seriesに出ようと思ったのか、

2日間を走りきる自身は?

などなどご興味がある方もいらっしゃるかもしれませんが、

今日はここまで。

 

レースが終わった後は表彰とお楽しみのアフターパーティーが!

アフターパーティーでもバッタリと出会ったライダーのお話などなどもまだまだあります。

 

ご興味のある方はまた次回に。

 

つづく。

 

 

EWS_GOALwithMIKE