ROAD


ENVE WHEEL ~インターナルニップル編~

2020.Feb. 16

先日伺ったENVEの展示会にて本国のENVE STAFFから直接話を聞く機会がありまして。改めてENVEはいいなぁと。そこでENVEユーザーには今更かもしれませんが改めて取り上げてみます。

ENVEのホイールはインターナルニップルを用いて組む必要があります。リムの内側にニップルが配置されるもので外部にニップルは露出しません。

ニップルにアクセスするためにはタイヤ・リムテープを取り外す必要があり、振れ取りがちょっと面倒なんだよなぁなんて世のフレトラーを悩ます機構でもあります。

ただ、当然ENVEも振れ取りが~のくだりは理解しているはず。では頑なにMTB・ROAD・CX・GRAVELと全てのカテゴリーでインターナルニップルを採用し続けるのはなぜなのか?ここでクローズアップしてみましょう。

そもそもENVEが目標としているのは地球上で最高のカーボンリムを作ること。それによってより良いライド体験をライダーへ届けるというところにあります。

ENVEのカーボンリムはそれぞれの用途で最適な強さ・軽さ・堅さ・信頼性を持ちますが、リムは単体では機能しないので「ホイール」として組み立てなければいけません。なので「ホイール」としての完成度は「ホイール組」の完成度と同等だというわけです。要するにENVEにとってのインターナルニップルは、より高い完成度のホイール・ホイール組に欠かせないもの、ということになります。

 

カーボンとは引張強度に優れた素材です。張力下の負荷を支える能力が高いと言い換えることもできます。なのでカーボン製品を開発する際には切れ目のないカーボン繊維を最大に使用することが目標とされます。これはカーボン製品を製造する最も安価な、あるいは簡単な方法ではありませんが、リムそしてコンポーネントの場合最良の方法です。

多くのリムメーカーはリムにスポーク&バルブホールをドリルし穴を開けます。この過程で強力なカーボン繊維は切断され完全性・強度が損なわれます。なのでスポークテンションに耐えられるようにするためカーボン繊維によって補強するのですが、リムの構造に不必要な厚みと重量が増えることになります。

 

そこでENVEはスポークとバルブホールをドリルを使うのではなく、リムの製造過程で穴を成形することで繊維を切断しない、Molded Spoke Holeとよばれる特許取得済みのテクノロジーを採用しています。

この技術によってENVEリムは耐久性と剛性をスポイルせずに軽量に仕上がります。成形されたスポークの穴は材料の補強をあまり必要とせずに小さくできます。また、スポークホールは小さいほど大きい穴よりも強くなります。

歴史的にカーボンリムを使うライダーを悩ませてきたのがスポークの不具合。長年のハードライディングや酷使されたことによる定期的なスポーク折れ→スポーク交換はホイールにとって健康な状態ではありません。

多くの場合のスポーク折れは、ニップル・スポーク穴を開けた結果としてリムを強化するために必要な補強が原因です。補強材はリムのスポーク面を厚くし、スポークニップルの関節機能を抑制します。これが発生すると、スポークはカーボンリムまたはニップルの端に対して曲げられます。曲げ応力と引張応力が組み合わさると、早期の疲労と破損が発生します。場合によってメーカーは、ニップルを適切な形に保持させるためにワッシャーを追加する場合もあります。ただし追加されたワッシャーによりスポーク面に厚さが追加され、難しいホイール組が求められ、ホイールシステムの重量と複雑さが増加するともいえるのです。

Molded Spoke Holeはこの問題も解決します。成形されたスポークホールの裏側には、ニップルがソケットジョイントのボールのように関節運動できる円錐形のニップルシートがあります。ENVEリムの薄いスポーク面は、成形された内部ニップルシートとペアになっており、スポークはニップルが着座するのと同じ角度でリムから出ることができます。

スポーク出口の形状をこのように簡単に調整することでスポークへのストレスが軽減され、疲労によりスポークが破損する可能性が大幅に減少します。

最初に戻ります。なぜインターナルニップル?という問いに対して、簡単に言えば、特許取得済みのMolded Spoke Holeと組み合わせることで、より耐久性と信頼性の高いホイールビルドが実現します。とENVEは答えています。

ラグジュアリーなイメージが先行するENVEですが、このように愚直で妥協のないモノづくりをする、むしろ泥臭いブランドだと言えるかもしれません。

次ホイールやコンポーネントを検討する際の参考になれば幸いです。

 

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